
コンペでの最優勝が追い風に。
兄と同じく理科系の大学に進むだろうと思われていた僕が、美術の予備校に通い始めたのは、高校 3年生の時。遅いスタートながら、日芸(日本大学芸術学部)に進学する事ができました。映画美術に興味を持って舞台装置コースに進学したものの、授業は演劇どっぷりの世界で・・・。演 劇そのものよりも、デザインする事に興味があった僕は、デザイン科に編入しなおしました。
デザイン科は水に合っていて、とても面白かった。デザイン科に編入する頃に応募 したコンペで最優秀賞をいただき、100万円と個展開催の特典をいただいたのも追い風になりまし た。 海外の展覧会を見に行ったりし、世界を目指すぐらいの心意気で作品づくりに挑んでいました 。
作品づくりに没頭した大学院時代。
学部を終えると、当時僕がつくっていた立体作品をより本格的に学びたくて、東京芸大大学院の彫刻科 へ進学しました。気の合う友人も多く生まれ、毎日熱く、芸術論を交わし合っていました。東京芸大は、とてもアカデミックな場所。伝統技術に造詣の深い教授陣が、前衛的な素材をつか ったぼくの立体作品をを理解し、細やかに指導してくださいました。
アトリエを借りて、バイト代はほとんど作品につぎ込んでいました。 時間があれば、作品のことばかり考えていましたね。懸命にアートを追究する中で、やがて、 挫折を味わう事になります。
挫折~修行時代。
僕がつくっていた作品は、現代美術のコンセプチュアルアートと呼ばれるようなもので、概念が重要な部分を占めるものでした。23歳を超えた頃、 急に、難しい概念が先立って歩く作品づくりが、楽しめなくなってしまったのです。もっと、身近な人たちが「これ、イイネ!」とのびのび言ってくれるような、日常的なものを つくりたい。色々と模索し、「家具作家になる」という目標を新たに持つようになりました。
そこで、大学院卒業と共に家具工房に就職し、技術を磨きました。ノミの研ぎ方、カンナ のかけかたから始まって、ひとつの家具を仕上げるまで。流れ作業方式の工房ではなかったので、 覚える事はたくさんありました。 家具工房には2年勤めました。
全部、自分の力で走る。
家具工房を辞めた後、自分のアトリエを設立するまでの切り替え期に、新鮮な空気を吸う旅に出ました。
自転車の前後に大きなバッグをつけて。中には、釣道具、山道具、テントなど必要と思われるものを詰め
込んで、約2ヶ月。九州を縦断して、沖縄まで旅しました。
旅の速度は、徒歩のように遅すぎず、自動車のように早すぎず。
荷物が50キロくらいあって重いので、最初はスピードが出ません。ギアをローに入れて、走り始めると
スピードが出てきます。やがて坂道に差し掛かると、押して歩いて。自転車はエンジンがついていない
ので、動物が逃げないんです。自然の音を聞いて、動物や植物を見て。 海に入って。
これまでで一番大変で、一番自分にフィットする旅でした。僕の生き方の原点を再確認した旅と言えるかもしれません。
ブランド「YYossYY」設立。
家具作家をしていた時のエピソードは長くなるのではぶきますが、結論から言って、家具づくりだけでは、
フラストレーションが溜まってしまった。もともとコンセプチャルなものづくりをしていた僕にとって、
家具は、あまりにも制約が多すぎたのかもしません。
そうして28歳の頃、ついに、「アクセサリー」という表現手段に出会ったのです。
アクセサリーを勉強し始めるとすぐに、面白いほどデザインが浮かんで。最初の1ヶ月で道具を買い揃え、
どんどんデザインを描き溜めていきました。僕にとって装身具は、彫刻を小さくしたようなものでした。
身に着けられて重すぎず、怪我をしなければ、後は、自由に表現してよいのですから。
僕の作品を見たまわりの人間が、小難しい顔をするのではなく、「イイネー!」と軽いリアクションで
褒めてくれたのも、嬉しかったですね。
僕がやりたかったのは、これだ、と。
新たなステージ 、鎌倉。
ブランドの設立後は、東京・中目黒のセレクトショップから始まって全国への卸がすぐに決まりました。
初めての展示会ではTOMORROW LANDと取引が決まって。その次が、H.P.FRANCE。素晴らしい
エージェントと出会えたおかげで、新宿の伊勢丹にもコーナーを持つことができました。
やがて、エージェントと共にパリの展示会の下見に行った頃だったでしょうか。この追い風に
乗るのは、ピンとこないなあ、と。もっとコンパクトに、身近な所で濃い活動をしたいと思い
始めました。前のように、自分の足で歩きたいと。
実は今、鎌倉にアトリエショップを計画している所なんです。波乗りが大好きな僕に取って、
海に近い所に住んでものづくりをするのは、長年の夢でした。好きなことと仕事がとけあった
時間を、家族とともに紡いで行きたいなと思っています。
SALONE AOYAMAのお客様へ。
僕、インターネットってあまり得意ではないんです。でも、今年、SALONE AOYAMAのオーナーさんに
手伝ってもらって、ブログを初めて。そんなに嫌いじゃないな、と気付き始めました(笑)
インターネットって実は、ブランドの世界観をしっかりと伝えられるツールだな、と。特にSALONE AOYAMAは、
作品やつくり手を大事にし、ブランド理解が深まる設計になっていると思います。
普段の展示会場ではなかなかゆっくりお話できないお客様にも、インタービューや作品集に触れていただく事で、今までにない見方や、面白みを感じていただければと思っています。
"わびさびの感覚"を大切にしたい。
YYossYYのアクセサリーのほとんどは、具体的なモチーフがないんです。
今まで見てきたもの、感じたこと全てが合わさって、僕というフィルター
を通して出てくる形が、YYossYYのアクセサリーです。ぬくもり感とか、
人間らしさ、あたたかみ。そういったものを感じていただければと。
僕、古道具が好きなんですね。時間を経て、いろんな要素が削ぎ落とされ
ゆがんでゆくかたち。人間がつくったものが時を経て、自然の力と人間の
つくったものの境目がなくなったような。質素な中に現れる上質な美。
そういったわびさびの感覚に通じるような
創作を、続けて行きたいと考えています。
(2009.4.19 アトリエにて)
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